Kyoukasyo Mondai [ronsetsu1]

社団法人日本てんかん協会機関誌「波」第17巻10号 1993年10月

【論説】

 「角川・教科書問題」は、私たちの予想を越えた展開を示しています。すり替えと脆弁に満ちた(回答書)への対応を協議しているさ中、前社長のコカイン騒動が持ち上がりました。そして今度は、著者の筒井康隆氏の(断筆宣言)です。問題の核心がそらされることのないよう、私たちはここで今一度、角川書店の責任を確認し、追求します。

●<論理>も<倫理>も欠落

 前月号でその全文を掲載した角川書店の協会の抗議への(回答書)は、今回、詳しく論破しているとおり、じつに無内容であり、著しく論理性に欠けるものです。と同時に問われるべきは、その倫理性の欠如です。

 この問題への角川書店の対応は、欺瞞と不誠実そのものだと言えましょう。自社の内部の対応のミスを、あたかも協会が非常識な行動を取ったかのごとく主張し、脅迫的な言辞さえ吐いています。今回の問題の発端は、千葉県の高校教師による指摘であり、それは協会に教示される前に、角川書店に対してなされたのです。それに対し角川は、どのような対応をしたのか。協会の示唆に対しての態度 は、教科書発行会社とは思えぬものです。

 倫理観の欠落は、決して一部の人の問題ではなく、組織全体を支配しているのではないか、という疑問に駆られてしまうのです。もう一度、協会の抗議(問題提起)を真剣に受け止めていただきたい。

●筒井氏の「断筆宣言」

「てんかん協会の抗議にプッツンした」と称して、著者の筒井氏が「断筆宣言」をしました。そのため協会には、マスコミから取材が殺到しましたが、回答は以下のとおりです。すなわち、「コメントを出す立場ではない」。自由人である作家が、何かパフォーマンスをおやりになったからといって、おつき合いする理由も時間も、私たちにはないのです。

 協会は、筒井氏に対しては、具体的に何も対応をしていません。今回の「反論」は、氏の(覚書)が雑誌に掲載されたから、それへなされるものです。今後のことはわかりませんが、私たちは理事会で慎重に、かつ「理解を作る方向で」と確認しています。この問題では、また理事会内での協議が必要です。

●問題は「教科書への掲載」

 私たちは、文学論争をしているのではありません。ましてや「言葉狩り」などという品性を卑しめる行為とは無縁です。誤った知識を高校生が学習しないよう、それで本人や家族が傷つかないよう、という教育論議なのです。偏見や差別意識は、「学習」によって獲得されます。それを防ぐのが、協会の目的のひとつ(定款・第二条)なのです。

 検定制度について、いろんな意見はあるでしょうが、適切な教材を発達途上の子どもに提供する目的があります。高校生は子どもでない」との主張もあるようですが、それは詭弁というものです。また、社会の中で許されるものと教科書で掲載できるものは、自ら異なってきます。科学的に明らかに過った内容や人を傷つける表現は、教科書から排除されるのは当然でありましよう。

 私たちは、「削除、差し替え」しかない、と主張してきました。脚注の変更や説明文の追加では、問題は何ら解決しないのです。



Last Updated Sep.24.97
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