Kyoukasyo Mondai [ronsetsu2]

社団法人日本てんかん協会機関誌「波」第18巻12号 1994年12月


【論説】
-筒井氏との了解により、「角川・教科書問題」決着する。

 昨年7月、協会が問題提起した「角川・教科書問題」は、作者の筒井康隆氏と協会の間で事態についての了解が得られ、教科書から問題の作品を削除する、ということで決着が図られることになりました。取り急ぎご報告し、これまでのご支援に感謝いたします。

●「問題」の提起

 筒井康隆氏の「断筆宣言」により、<差別語(表現)と言論の自由>という形で大きな反響を呼ぶに至った今回の問題は、協会では「角川・教科書問題」と正式に呼ぶように、文学の問題ではなく教科書の問題として考えて来ました。すなわち、約三十年前に書かれた作品が、新たに教科書に掲載されるようになったから、協会は問題提起したのです。

 しかし、協会の主張は必ずしも理解されたとは言えません。それどころか、「言論圧殺ファシスト集団」と非難する識者も出る始末で、会員の方々には大変ご心配をお掛けいたしました。著名な作家である筒井氏の「宣言」と、それに触発された付和雷同の<非難>は、残念なことにてんかん運動への誤解を生みだし、協会の正当な要求でも「言葉狩り」として否定されてきました。ただし協会は、「波」で詳しくご報告してきましたので、会員への誤解はなかったと信じています。

●「問題」の本質と誤解

 協会は、「声明」を発表し、角川書店へ抗議文、文部省へ要請文を出し、文部省の記者クラブで記者会見を行っただけです。加えて「支部」では、教育長に要請行動をしました。これらは、すべて言論活動そのものであり、また作者に対する対応はまったく行いませんでした。繰り返すとおり、これを「教科書問題」と考えたからです。

 しかし、抗議文の中に「文庫や全集の回収」の要求があったため、表現活動に対する圧力と批判されました。そして、筒井氏の「宣言」に対応し、賛否両論が巻きおこり、戦後のわが国の有数の論争に発展しました。当事者でありながら私たちは、ただただ当惑するばかりでした。てんかんをもつ人の問題、特に自動車運転免許に対する誤解を強め、差別を助長するとした私たちの問題提起は、ほとんど顧みられなかったのです。

●自体(注:原文のまま)の急激な進展

 このような中で、月刊誌「創」の篠田博之編集長より、筒井氏との直接対話が提案されました。そして、いくつかの前提とルールが、筒井氏と協会の間で確認されました。協会は理事会で基本方針を決定し、その方針に基づいて書簡を送りました。それに対し筒井氏より返事があり、これを二回繰り返しました。そこで、結論が出たのです。

 11月7日に角川書店も同席し記者会見をしました。これで、この件はすべて決着したということができます。詳しいご報告、特に両者で交わされた文書は、来月の「波」に全文を掲載します。今年の終りを、問題の解決によって迎えることができたことを、皆さまとともに心から喜び合いたいと思います。ありがとうございました。

(常務理事 松友 了)



Last Updated Sep.24.97
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