Kyoukasyo Mondai [seimei1]

●「角川・教科書問題」の合意・了解について●

共同記者会見にあたっての声明

社団法人日本てんかん協会 会長 鈴木勇二

1994年11月7日

(社)日本てんかん協会は、昨年7月、筒井康隆氏の約30年前の作品 「無人警察」が、高等学校の教科書に掲載されることに抗議し、その 削除(別の作品への差し替え)を発行元の角川書店に求めました。 また、文部省や各都道府県教育長にも、その適切な対応を求めて 抗議・要請してきました。私たちは、この作品が「てんかんをもつ 人々への差別を助長する」と判断したからです。
 しかしながら、私たちの主張は十分に理解されることなく、作者 である筒井康隆氏の「断筆宣言」により、「差別表現と言論の自由」 の問題に拡大されました。この論議の出発に、私たちの抗議文の文面、 すなわち「文庫本や全集の回収」という表現があったことは、勇み足 として反省するものです。その後、さまざまな形で議論は発展しま したが、私たちが抗議、要請した問題は顧みられることなく時間が 過ぎ、問題の教科書は今年4月より使用されるに至りました。
 このような中で、私たちは問題解決の糸口を探って模索して来まし た。その結果、私たちの抗議より1年を経た時点より、筒井氏との間 で文書のやり取りを開始することができました。そしてこの度、教科 書掲載や私たちの抗議行動について、合意・了解に達しました。ここ に、共同記者会見を開くことができますことを、大変嬉しく思います。 また、角川書店におかれましても、誠意ある姿勢をお示しいただきま した。深く感謝申し上げます。
 往復書筒にありますとおり、この作品が<差別を助長するか否か> という点の評価については、私たちと筒井氏の間で、必ずしも一致が 見られたとはいえません。しかしながら、この作品は30年前に書かれ たものであり、教科書掲載を問題にしてきた私たちは、その撤回が約 束されたことで、私たちの要望は受け入れられたと判断し、今回の抗 議行動の終了を決意したのです。また、今後の対応について、私たち の考えをご提示いたしました。これは、市民的な常識とも言えるもの であり、筒井氏のみならず、すべての表現者に向けたものであります。
 なお、教科書の内容の変更は、検定制度の関係で実際には、長い時間 が必要だとお伺いしております。また、文部省のご理解、ご決断を前提 としております。その点を十分に理解し、納得し、さらには信頼をした 上で、今回の筒井氏及び角川吉店のご決断を評価した次第であります。
 心ならずも、世間をお騒がせする結果になったことに、戸惑いと責任 を感じています。しかしながら、私たちの会は、長い間、偏見と差別の 中にあって苦しんできた、てんかんをもつ人々とその家族の尊厳を守る ことが、第一の目的であります。そのため、主張しなければならない、 引けない一線があることはご理解ください。と共に、てんかんをもつ人 々の社会への完全参加は、社会の人々の正しい理解と共感を前提として いる、と認識しております。そのため、積極的に「てんかん」を語る必 要、てんかんをもつ人々を描く必要がある、と考えています。どうか、 筒井康隆氏及び角川書店はもちろん、ここにお集まりの報道関係の皆さ ま、そしてすべての表現者の皆さまに、心からご助力をお願い申し上げ ます。
 最後に、私たちの行動に対して、ご理解、ご支援を賜りました、多く の方々に心から感謝申し上げます。また、このような形で、両者の合 意・了解に至る道筋をお作りいただき、今回の記者会見の場を設定くだ さいました、月刊誌「創」の篠田博之編集長に、心より御礼申し上げま す。
 以上、簡単ではございますが、簡単に経過を振り返り、私たちの所感 を述べさせていただきました。本日は、多くの方にお集まりいただき、 ありがとうございました。
(社団法人日本てんかん協会機関誌「波」第19巻1号 1995年1月掲載、原 文は縦書き)



Last Updated Dec.9.98
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