てんかんと作業所6-10

  1. 作業所設立までの働く場に対する試行錯誤 一なぜ作業所が必要だったか一
  2. 設立に関わった人達の願いと働き 一それぞれに応じた働く場を一
  3. 作業所から親子が得たもの 一作業所ができるまでとできてからの親と子の変化一
  4. 行政の窓口はどこ? 一制度・計画に含まれることの必要性一
  5. 作業所の仲間達
  6. 仲間に合わせた仕事づくり
  7. 仲間の給料
  8. 仕事を通しての仲間づくり
  9. 仲間自身によるミーティング 一利用者主体の作業所をめざして一
  10. 仲間どうしのつながりを大切に 一一人一人の個性が考慮され、人が人のなかで認められる集団づくり一
  11. 作業所から就職へ 一のぞみ共同作業所の試み一
  12. てんかんの人の多様な働く場の必要性と全生活の支援を(最終回)
てんかんと作業所について、日本てんかん協会機関誌「波」1999年4月-2000年3月号 まで12回連載された記事です。この特集についてのご意見ご感想を メールでお寄せ下さい。
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てんかんと作業所6

仲間に合わせた仕事づくり

あかり作業所 岡本 朗・城山佐和子・西川美央


 作業所開所前の準備金では○安心して毎日通える場、○友達づくりの場、○体力づくりの場、○生活 訓練の場として作業所の位置付けを行っていました。仕事前の取組みを中心に考えていました。

 94年に作業所を開所した当初は通ってくる仲間は2-3名でした。きなこの製造と袋詰め、ひじき の袋詰めが仕事でした。仲間が増えると仕事量は不足し、仲間からは「仕事がないなら作業所にこない」 と言う意見も出されるようになりました。仲間たちは作業所に仕事をしにきていることを職員は確信 し、仕事の開拓を行いました。袋詰め作業が上達していくなかで、豆、雑穀、椎茸と新しい仕事が増え ていきました。2年目をむかえると仲間も1O名を越え、食品の袋詰めだけでは仕事の絶対量が足りな くなり、様々な下請けの仕事を取組んだこともあります。納期にせまられたり、作業量が仲間でこなせ るものでなく職員が休日出勤や残業をおこなって何とか問に合わせたりしていました。「こんな仕事の 仕方は仲間の仕事ではない」と職員で話し合い、「作業に仲間を合わせるのでなく、仲間にあった仕 事作り」を確認しました。そうして自主製品として廃油を使った石けん作りを始めました。石けんば自 主製品のため納期や量に追われることはなくなりました。その当時は作業ごとの班もなく、その日の希 望で分れて作業に取り組んでいました。しかし、作業の分担が明確になっておらず、仲間も自分の仕事 が把握できていませんでした。作業班をつくり、班での仲間一人一人の仕事作りをおこないました。現 在は「はかり班」(食品の計量袋詰め)「ラベル班」(商品へのラベル貼り)「石けん班」(石けん作りと 備長炭の箱詰め)の三班で仕事をおこなっています。

[本人の意思、意欲を尊重したとりくみ]
<発作が多いKくんの仕事づくり>
 Kくんは、あかり作業所で最も発作が多い仲間です。発作の種類も脱力発作、意識の朦朧状態が続く 発作、バタンと倒れ強直する発作などが常にあります。以前通っていた通所授産施設をやめてあかりに 通い始めましたが、最初はあかりに来ても皆と一緒に作業をせず、しばらくは「俳句」や「漫画」を作 って過ごしていました。作業所に慣れ、皆と一緒に仕事をすることに本人が納得してからは作業に参加 できるようになりました。当時はまだ「作業班」がなく、その日によって作業内容が変わっていました。 また仲間それぞれに応じた固定した役割も決めておらず、皆様々な作業をおこなっていました。

 しかし、彼は倒れる発作が頻発するので立ち仕事が危険だったり、流れ作業だと発作が続いている間 全体の仕事が中断してしまったりして、それまでの「日替わりのローテーション」の仕事のやり方では うまくいきませんでした。椅子に座って自分のぺ一スでできる仕事を「Kくんの仕事」として位置づけ 「ラベル班」で食品の袋にラベルを貼る仕事をおこなっています。

 <僕の仕事をとらないで〜仕事をやりとげる満足>朝、作業を始める前には、作業班ごとの打合 わせの中で、仕事の内容や仕事量(今日納品する商品と数、納品先)を確認し「誰が何をする」かを決 めています。彼は体調によって「今日はできる」「2つはちょっと無理」など班の仲間に告げます。 ラベルを貼る仲間同志で「じゃあ俺が代わりにする」「俺も今日は量が多すぎて難しい」などそれぞれ出 し合いながら仕事の調整をおこなっています。

 『ラベルを貼って納品をする』という作業班全体の大きな目標があって、更に各々の仲間が『今日自 分がする仕事』の目標を決めています。Kくんも今日する仕事を自分で決めたり、発作がありながらも 任された仕事は自分のぺ一スで最後まで仕上げています。

 ある時、Kくんの側で作業を見ていたボランティアさんが、発作で仕事が中断しているのを見て(手 伝ってあげようと思ったのでしょう)仕事を仕上げてしまったことがありました。発作から意識が戻っ た彼はやりかけていた自分の仕事をボランティアさんがしてしまったのを知り「自分で全部できたの に!最後までしようと思っていたのに!」と大声で怒りました。

 作業所は仲間たちの働く場です。作業所には仲間たちそれぞれに、任された「自分の仕事」がありま す。職員の役割は、作業を速く効率的に仕上げようと、彼らの仕事を横から手伝うことではありません。 仲間たちは発作や知的障害も個々に違い、能力も皆一様に同じではありません。仲間ひとりひとりに 合わせた仕事作りをおこない、仲間たちのぺ一スを考えて仕事の段取りをおこなうことが、仲間たちの 仕事を支える職員の役割だと考えています。

[仲間にわかりやすい仕事づくり]
 <就労につながらなかったMくんのケース>
 M君は、てんかんと中-重度の知的障害をもちながらも、普通高校を卒業し、その後職業訓練校に2 回行きましたが、就労にはつながらず、就労経験がないまま在宅だった仲間です。

 95年よりあかり作業所へ通い始め、現在、彼は、食品の袋詰めをする「はかり班」で、他の仲間がボ ウルに計った食品をじょうごで袋に入れる作業を担当しています。

 はかり班では、朝の打ち合わせてその日の仕事の確認が終わると、仲間達が、自分の作業に必要な道 具を、それぞれ準備します。彼の役割は、その日誌める食品の種類に応じて袋を選び、机の上に出すこ とです。以前は、仕事の準備や片付け、掃除などの場面において、ボーツと立っていることが多く、 "指示がないと動かない人"という印象がありました。けれど、彼の行動などを見ていく中で、実際は、 ただボーツとしている訳ではなく、彼には、次に何をすべきかという見通しが持ちにくいということ や、逆に、することはわかっていても、それを先に他の人がしていたり、邪魔になっていたりすると、 その人が終わるまでじっと待っているのだということがわかってきました。

 あかり作業所では、仲間が自分達の仕事をよりやりやすくするために、仲間同士で作業の中で困るこ となどを話し合う「作業班会議」の時間を設けています。その「作業班会議」の中で、M君から、「作 業場が狭くて困る」という意見が出ました。実際にどんなところが困るのか、職員が詳しく聞いてみる と、「袋がとりにくい」ということがわかりました。本人に言われるまで、他の人には気付きにくいとこ ろでしたが、袋の入った箱のおいてある場所は、彼の位置からは遠く、そこに他の仲間がいると、とて も狭くて取りにくいという状況だったのです。

 そこで、袋を、彼から近い机の引き出しに入れるようにし、引き出しの表には、入っている袋の種類 がわかるように、種類を書いたシールを貼って、彼が人を待ったり、取ってもらったりせずに、自分で 袋を取り出せるようにしました。

 さらに、袋の管理を彼の仕事としてしっかりと位置付けていくために、袋の出し入れはいつも彼にし てもらうようにし、やむをえず他の人がする時にも、必ず出し入れしたことを伝えるようにしました。

 そのような取り組みを続けるうちに、口数が少なく、自分から人に話しかけることの少ない彼が、自 分から、引き出しの中の袋が少なくなってきたことを職員に伝えたり、わからないことを尋ねだりと、 仕事に対して、以前よりも積極性がみられるようになってきました。また、このようにして、彼の役割 を分かりやすく整理していくことで、彼が、決まった自分の役割に対しては、責任感が強く、見通しを 持ってしっかりとやれるのだということがわかってきました。

 仲間に合わせた仕事づくりは、作業をする上で、仲間がどんなところに困難を感じているかというこ とを発見していくことから始まります。また、仲間に合った仕事を作っていくだけではなく、仲間達が、 それぞれの仕事を、『人から与えられた仕事』ではない『自分の仕事』として、主体的に取り組めるよ うに、仲間達の意見を尊重し、よりわかりやすくしていくことも大切です。そうすることで、仲間の仕 事に対する意欲ややり甲斐を引き出していくことができるのです。

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てんかんと作業所7

仲間の給料

あかり作業所 樋口尚子


[1.給料の財源はどのように作られるの?]
 給料の財源は、毎日仲間が行っている下請け作業工賃(食品・ハーブティーの袋詰め)とあかりの商 品(きなこ・ひじき・石けん〕の売り上げで作られています。
 つまり、仲間の仕事の量と商品の売り上げが、給料やボーナスの財源となっています。

※仲間の給料は、公的なお金の中からは支払っ てはいけないシステムとなっています。

[2.1ヶ月の平均財源はどれくらいあるの?]


仲間の給料の財源は妥163,799となります。仲間の給料の財源を少しでも増やして、給料やボーナスに 還元していけるように、新たに備浸炭の下請けの(箱詰め)作業も取り組み始めました。
[3.毎月の給料はどうやって決めるの?]
 現在あかりでは、在宅になってしまわないように、休まず出勤できる事を大切にしています。
 仲間は、出勤してきたら、一番にタイムカードを押しています。職員はそのタイムカードを見て給料 の計算を行っています。つまり、現在は時給制となっており、1時間60円となっています。又、給料と して計算される時間は10:00-16:00で、1日働いて360円になります。仕事が忙しくて、16:00を過ぎて しまう時は、残業・又、早出の場合、逆に遅刻・早退の場合は、10分単位がユ0円でプラス・マイナスさ れています。(98年度までの単価です)


[4.仲間の有給休暇保障]
 あかりに通う仲間は、てんかん発作や義足の調節など、定期的な通院を必要とする人がほとんどです。 そのため、仲間から、有給休暇を希望する声が上がり、話し合いの結果、次のような有給休暇を保障し ていくことになりました。
○主たる障害の通院に関する休暇…月に2回まで
○女性の生理休暇…月に2回まで
※生理により体調がグッと左右される事も多く、 発作が多くなったり、目まいなどに悩まされる女 性も少なくありません。
○忌引…1日-7日相談に応じながら保障

※有給休暇をとる場合は、上の用紙に記入して、申告してもらいます。

[5.今月はどうだった?]
 働く者にとって、自分の頑張りがどの様に評価され、給料へとつながっているのかは大切な問題です。 「今月は遅刻をしてしまい、少し引かれた… 残業があったので給料が増えた… 今月は休みが多かっ た…」など、給料明細をわかりやすく伝えるために、何度も改良を重ねて、現在の給料明細(図1)が出 来上がりました。

[6.毎月の給料が上がりました]
 作業所では給料を渡すだけでなく、給料を使う取り組みも行ってきました。近ごろは仲間同士、給料 日に近くのドーナツ屋さんにいったり、買い物に出かけたりする姿が見られるようになり、自分の好き なものを買った話を聞くことも増えました。
 そこでもっと給料を使えるように、時給をあげる提案を職員から行いました。



 但し、会計の方は収益は仲びているものの、仲間の工賃を1.5倍にするだけの財源は見込めません。仲 間には、[図3]のような説明を行い、毎月の給料を上げるか、それとも今まで通りボーナスをいっぱ いもらう方がいいかを話し合ってもらいました。



 今まで通りでいいという人もいましたが、「毎月買いたい物がたくさんある」「我慢して貯めないと CDも買えない」「給料が増える方がいい。ボーナスはこれから稼げばいい」という意見が多く、時給を あげる事に決まりました。(99年4月より実施)
 話し合いの中で「ボーナスを増やすためにはもっと商品を売ろう」「バザー頑張ろう」という意見も 出されました。
 実際に話し合い以降の仲間のバザーに対する姿勢はとても積極的な物になり、以前より大きな声での 宣伝や、商品が残りそうになると、自分達から「いかがですか」を持ち歩いて販売する姿も見られるよ うになりました。
 今回の話し合いでもそうでしたが、収支や給料の決め方、有給休暇、現在の仕事の状況、給料明細な ど、仲間にわかりやすく伝えていくことで、働く仲間の意欲を大きく変えるものになっていると感じて います。

[7.みんな毎月の給料はどうしてるの?]
 あかり作業所に通うKさんは、以前は給料をお父さんに預けて、その中から必要な時にお小遣いをも らって使っていました。でも、その場合、買い物をするのに、「〜を買うからお小遣いをちょうだい」 と、お父さんに許可をもらわなければならず、本当にほしい物をすぐに手に入れることができませんで した。
 しかし、今では、給料をお父さんに預けず自由に使えるようになり、彼女はうれしそうに話してくれ ました。
Q、給料で何を買いましたか?
A、・大好きな芸能人のポスター、CD、シールなど小物
 ・腕時計、ピアス、お財布、マンガ
 ・給料日に仲良しの伸問とミスタードーナツにいきました。

 自分で働いて得た給料を、自分の好きなことに使えるのは、誰にとっても嬉しいことです。

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てんかんと作業所8

仕事を通しての仲間づくり

あかり作業所 岡本 朗


 てんかんの仲間の作業所を作ろうと準備会を立ち上げた当初から、当面の課題の建設資金づくりだけ でなく運営や仲間の仕事づくりも平行しながら話合いを重ねていきました。○発作があっても安心して 通える場○仲間にあった作業○仕事を通しての仲間づくりを目標に仕事づくりを大切に考えました。 1997年に全国社会福祉協議会の助成を頂いて発行した、一てんかんを持つ仲間の作業所づくり一『発作 があっても仕事がしたい』を表題にしたことも仲間の働くことを大切な柱にしてきたからです。

 仕事はあかり作業所が開所する前から、自然食品のきな粉の製造と袋詰めがありました。作業所がま だ建築中の時から、敷地の大家さんの事務所を借りて作業をおこなっていました。

 仲間1名と職員1名で作業をおこない、作業所が本格的にスタートした4月になっても仲間が一名増 えただけですが、毎日の仕事があることで作業所を続けられ、新しい仲間が増えてもその仲間の仕事づ くりを取組むことができました。

 現在15名の仲間が、○食品の計量と袋詰めをおこなう「はかり班」○出来上がった商品にラベルを 貼る「ラベル班」○廃油を使った石けん作りと備長炭の箱詰めをおこなう「石けん班」の3班に分か れて作業をおこなっています。

 今回は石けん班の仕事を通して仲間づくりについて述べます。

[石けん作りを仲間の仕事として]
 石けん作りは作業所が開所してまもなくボランティアの方から紹介され、始めた仕事です。当初は作 業所で使う程度の石けんとしか考えていませんでした。独立した石けん班になるまでは食品の袋詰めの 仕事がない時に、「今日石けんを作ります。石けんを作ってくれる人」と職員が朝の会で声をかけ、希 望者と職貝で作っていました。油で汚れ、臭いもきつく外での作業で、好んで石けん作りに参加する仲 間はいません。商品になるまでには失敗の連続、できあがった物も販売できるような石けんではありま せん。

 商品として売れないものを作る仕事は、仲間にとっては自分の仕事にはなりません。試行錯誤を続け る中でなんとか安定した商品になりました。バザーや様々なイベントの販売会で売れるようになりまし た。少しずつでしたが評判もよくなり、電話での注文も入るようになりました。職員が石けんを作りを 尋ねた時に必ず手を上げ石けん作りに興味を示している仲間がいました。この仲間を中心に石けん班づ くりをおこないました。

 石けん班の仲間は、○食品の袋詰めの作業自体はできても小発作があり流れ作業にはついていけない 仲間○頻繁に小発作や大発作があり作業が中断してしまう仲間○養護学校を卒業し知的障害が重く食 品の袋詰め作業が難しい仲間○集団参加が難しく適所も安定せず対人面での問題がある仲間の5名で スタートしました。石けん作りをはじめて2年目に石けん班が独立しました。 [石けん班での仕事作り]
 石けん班ができるまでは石けん作りに興味を持った仲間と職員が中心になって仕事をおこなっていま した。石けん班ができ班の仲間が皆同じ作業をおこなうこともありました。そうした作業を続けていく 中で見えてきたことは、障害が軽い仲間にとっては石けん作りのどの工程も理解し作業をこなすことが できても、障害の重い仲間や発作が頻繁にある仲間にとっては、どの作業もできるわけではないこと。 作業工程を整理し仲間の障害や発作の状況を見ながら仲間に合った作業づくりを取組みました。
◎ここで石けん作りの工程を紹介します。



 障害の軽い仲間が中心になり石けん製造工程、障害が重い仲間が準備商品化の工程と、作業の分担を おこないました。障害の程度と作業能力に分けて仕事を取組みましたが、新たに見えてきたことは工程 を分けても各作業の役割が明確になっていなかったことです。

 仲間たちは自分がどの作業をおこなうか見えずらく、仲間同志の作業での関わりが弱く、どうしても 職員の指示が中心になり、自分勝手に判断をして作業をおこなう場面も見られるようになりました。

 工程ごとに作業分担をおこない、どの工程がだれの係かを決め、人の作業は取らないこと、人の作業が 終わるまで待つこと、共同の作業(撹拌作業)は時間を決めて順番でおこなうことを取組みました。

 体調が悪かったり、発作があり作業ができない時は仲間に伝えて、作業を代わってもらうようにもしま した。こうした取組みの中で職員指導型の作業から仲間が中心になった作業に変わっていきま した。職員の役割は休みの仲間の代わりや、仲間ができない部分の援助をおこない、石けんづくりが仲 間の仕事となっていきました。

 一つ一つの石けんが本当の仲間の手作り石けんとなりました。

[仕事の確立で見えてきたもの]
 6名の仲間の一人一人の仕事が集まって、一つの石けんが出来上がっていくことが実感でき仲間にも 仕事が見えてくるようになりました。

○袋詰めをし最後に袋の圧着が担当の仲間がいます。その仲間は毎日の通所ができず、作業所に来て も作業に入らないこともよくあります。いつまでも石けんが仕上がらずたまっていくばかりです。石け ん作りをコツコツと取組んでいる仲間にとっては不満もあったようです。しかし、この圧着の仕事を他 の仲間が取上げてすることはなく、担当の仲間が作業を行うまで待っています。こうした作業班の集団 の中で、この仲間は「今日は仕事があるのか」と電話でたずね、作業所にやってきます。皆と同じ時間 で仕事はできませんが、機嫌が悪くても自分の役割の圧着の仕事ができるようになりました。

 作業所に来れば自分の仕事があり、彼の仕事を認めてくれる仲間がいることで、彼は変わっていくこ とができました。

○また、常に仲間に指示を与えて自分の仕事や役割が見えなくなっていた仲間がいました。職員の声 かけを同じように仲間に指示していました。いざ仕事が始まると自分が何をするのか解らず、職員が具 体的に指示しなければなりません。また、一つ一つの作業は指示で動けても作業の流れを見通して仕事 をすることが難しい状態でした。役割や係を決めたことで自分の仕事が見えるようになり、指示をする こともすくなくなり、集中して作業に取組め見通しを持った作業がおこなえるようになりました。

 このように自分の仕事が明確になり、仕事に自信と責任を持っておこなえるようになり、初めて他の 仲間の仕事も認め合えるようになりました。

[お互いが認めあえる作業集団]
 あかり作業所の仲間たちは毎日遠くから電車やバスを乗り継いででも作業所に通ってきています。一 か月代まず働いても交通費の方が高い仲間も多くいます。それでも毎日楽しみに通ってくるのは作業所 に自分の仕事があり、仕事を認めてくれる仲間、話を聞いてくれる仲間、職員がいるからです。

 石けん班だけでなく、どの作業班も仲間の能力に合わせながら作業を分担し、一人一人に役割を持っ た仕事づくりをおこなっています。そうした作業集団の中で働くことを通して、人とのつながり、評価 され認められることで仲間たちは変わっていきました。働くことに生きがいを持てるようになりました。 今ではバザーへ出店の時の商品の数や係決めなど、直接関わることは仲間の話合いを通して決めていま す。自分の作業だけが仕事ではなく、皆で作った商品を一つでも多く販売し自分達の給料にしていこう とする意欲にもつながってきています。

 あかり作業所の多くの仲間は学校を卒業し在宅が長くなり、仲間は人と関わることや社会からも遠ざ かっていました。作業所での仕事を通して自分に自信をつけ、仲間と働くことを通して人とのつながり を実感し、人への思いや、人のことを思いやれることが育っています
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てんかんと作業所9

仲間自身によるミーティング

一利用者主体の作業所をめざして一

さざなみ共同作業所 松田牧子


[さざなみ旅行までの道程]
 さざなみ作業所に通う仲間同士のミーティングは日常的には作業の始まる前と後に連絡や感想を言い 合う程度のものです。話し合いは社会生活の基本であり、そのルールを身に付けるこが社会参加をする 上では必要不可欠となります。話し合いの場を持つことによってこのルールを身に付ける一助になれば との思いと、作業所が利用者(『仲間』と呼んでいます)にとって''自分達で何でも話し合って決めて いくことのできる場''であってほしいという思いから、意見を出し合う場面を設けるように心がけて接 していますが、"話し合い"というとどうしても堅苦しいイメージがつきまとい、なかなかうまくいき ません。楽しめる議題から始めた方が無理なく話し合いの場に入れるのではという考えもあり、昨年ま では職員が企画して行っていた「作業所の旅行」という一大イベントの企画に仲間が全面的に参加して もらおう!と期待をこめて、2つの作業所の仲間全員による合同ミーティングが始まりました。

[どんな意見もまず受け容れて]
 旅行の行き先を決めるにあたって各自の意見を聞いてみると、九州各地はもちろん東京・北海道・韓 国まで、実に多彩な意見が出されました。日程や予算を考えて「そんなの無理よ」と言ってしまえぱそ れまでなのですが、出た意見にはみんなで耳を傾けてみました。そうすることによって初めはほとんど 旅行のイメージを描けなかった仲間も触発されて意見を出し初め、また片ひじ張らずに様々な発言がで きる雰囲気が少しずつできてきました。

[楽しい話題から本質的問題へ]
 持ち寄った資料を元に各自がおすすめの観光地について思い思いの発表をしている中に出たのがSさ んの意見。それは「作業所の旅行って、観光が目的じゃないと思う。僕は夜旅館でいろいろ話したりす るのがf可より楽しみなんです。」というもの。浮かれがちのその場の雰囲気は一瞬にして静まり返った のですが、作業所の少ない給料(1人毎月5000円程度)に頼る身にはぜいたくは縁遠いというSさんの 思いは他の仲間にも通じるものがあり、そこから「言われてみれば"人と話すこと"も大事だよね」 「(遠すぎず)現実的でかつ楽しめる場所がいい」など自然と旅行の目的・旅行に何を期待しているかに ついての意見交換へと発展していきました。または「自分はめったに旅行なんて行かないのに、目的と か硬く考えると気後れしちゃう」といった意見も出されました。この日の議論は感情的になりがちでし たが、その次のミーティング時には「楽しければどこでもいいよね」という気持ちに皆自然となってい ました。そして前回挙がった見どころをワープロでまとめたものを参考に少数派の意見にも皆で耳を傾 けた上で、無理のない日程で行ける『湯布院』に行き先が決定しました。

[多数決ではなく一人ずつの意見を]
 仲間達白身がガイドブックから抜粋してワープロ打ちした資料を用い、どこを見学し昼食は何にする かなど話し合いが具体的になってくると皆の顔もより輝いてきました。それまでの話し合いの仕方で 「多数決ではなく話し合って決定する」というやり方がある程度定着してきていたためか、意見が分か れた時も自分の主張は曲げないながらも相手の意見も尊重するというシーンもでてきました

[不安はあるけれど]
 作業所の旅行が初めてで、人付き合いや発作についての不安の大きい仲間もありました。そこで全員 のミーティングの中で、「日頃の作業中に発作が起こったときと同様に旅先での発作などについても受 け止める用意がある」ということと、「皆それぞれに不安があるのは当然だけれど、その不安が理由で 参加をあきらめる必要はないんだよね」ということの確認を行いました。「やってみたいことはあるけ ど何かあったら周りに迷惑をかけるのでは…」という懸念から行動を制限するのではなく、.どんな時で も作業所は仲間を応援していくから一緒にやってみよう、という作業所の基本姿勢を改めて伝える場面 ともなりました。このような行動制限による経験の不足から、社会生活を送る上で周りから見れば不自 然に見えることもあります。例えば旅行で観光地にいくとしてもその楽しみ方がわからないなど一でも 楽しそうに見えなくても、本当はとても楽しんでいるようです。誰もが普通に無意識にやっていること でも大変な思いをしてやっている仲間もいます。経験を重ねることで社会生活の技術を身につけていく ことがきわめて大事です。

["自分達で"という感覚を少しでも]
 無事旅行から帰った後のミーティングで旅行中の楽しい出来事や初めての経験の印象を報告し合いま した。その中で自然と「来年は○○に行きたいね」「今度は大きいホテルに泊まってみたい(今年は小 さな純和風の旅館でした)」など、早くも次回につながるような意見も出てきたのは「旅行はどこに行 くの」「いつ決まるの」と職員任せだった昨年度までと大きな違いです。また、「○○はつまらんかっ たね一」「△△にすればよかったのに」などの不満も少なからず出てきたのですが、満足できなかった 点・失敗したなど感じた点が個々にあっても、あくまでも仲間一人一人の意見によって作っていった旅 行であり誰に押しつけられたものではない、という感覚は持てたようです。作業所に通ってきている仲 間は、"何か失敗をする前に周囲の人によって未然に守られている"というようなことが往々にしてあ るようですが、"自らが選んで、その結果喜んだり残念に思ったりする"という機会を作れるのも、作 業所の役割のひとつなのかもしれません。このような自己決定による経験をすることによって自信や勇 気を持つことができ、「保護から自立へ」の貴重なステップともなります。

[意見を出すことによって得られるもの]
 仲間同士の話し合いを作っていく前提として大切なのは一人一人が自分の意見(別に立派でなくても いい)を出してもいいんだという感覚を持てるようになることではないかと考えます。意見を出すとい うこと自体ある程度勇気と自信が必要な行動ですし、意見を出した結果に対しての責任を負う怖さの ようなものもあります。しかし意見を出してそれを他の人に聞いてもらえることによって得られる自分 が認められたという幸せな感覚は他には得難いものです。そうした経験と感覚の積み重ねによって、ひ いては自分の人生を歩み取って行く力を培うことにもつながれば、と恩います。

[仲間同士の育ち合い]
 作業所の仲間と接していると日々新たな発見があります。どういう願いをもっていてどんな形でそれ を表現するのかは予測を越えたところにあることもしばしばです。仲間同士が意見を交わす機会を持つ ことによって、対職員、対家族の場合にはみることのできなかった新たな面があらわれ、育っていくの にはむしろこちらが驚かされます。作業所での転作業では驚くほどわずかな工賃しか得られないのが現 状ですが、こうしてひとりひとりの意思を大切にしつつ集団との関わりをもてる場であることで、仲間 は生き生きと働き、生活していけるのだと思います。現時点では議題の設定をはじめとしてまだまだ職員 の援助が必要ですが、そのことを踏まえた上で、今後もより良いミーティング作りへの援助をしていき たいと考えています。
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てんかんと作業所10

仲間どうしのつながりを大切に

一一人一人の個性が考慮され、人が人のなかで認められる集団づくり一

あかり作業所 城山佐和子


I.お互いを認めあえる集団の素地をつくる <朝の会のとりくみ>
 朝、仲間たち(作業所に通う人達のことを、「仲間」と呼んでいます)が出勤してくると、仕事を始 める前に全員で朝の会を行います。朝の会は「仕事の導入」としてだけでなく、仲間たちが「自分のこ とをみんなに伝え」「互いに理解しあう」集団作りの一環としてとりくんでいます

 朝の会の司会は現在職員が行っていますが、司会をする上で、仲間がどんな発言をしてもまずは受け 止め、他の仲間たちにも聞いてもらえるように、時にはわかりやすく噛み砕いてフォローしながら進行 しています。

 朝の会の流れは、@出欠の確認A今日の予定B体調の確認となっています。時間はその日によって まちまちで、早ければ10分程度で終わりますが、30分、1時間とかかる日もあります。

<朝の会で大事にしていること>
具体的に朝の会の流れに沿って、何を大事にしているか述べたいと思います。

@出欠の確認
 作業所に来ていない人について「どうしたのだろう?今日は来ないのかな?」と思えるのは、仲間同 士がお互いに関心を持ち合っている証拠です。その日の出欠を職員だけが把握するのではなく、休みの 理由も仲間たちに伝えるようにしています。

A今日の予定の確認
 仕事の主人公は仲間たちです。その日の仕事の内容を、職員だけが把握してあれこれ指示を出すので はなく、朝の会の中で確認しています。

 以前、伸問の仕事に対して、職員が「作業をいかに効率よく回すか」だけを考えていた時には、仲間 に予定を伝えることをなおざりにしていました。しかし、「仕事の主人公は仲間だ」ということを職員 集団の中で確認しあってからは、仕事に関してはまず仲間たちに伝え、仲間たちの確認を得るという基 本的な姿勢を職員自身がもてるようになりました。朝の会で仕事の確認を行うようになり、職員だけが 忙しく立ち回っていた以前とは違って、「今日は仕事が多い」とか「納期が明日まで」というときも、 仲間同士で忙しさを乗り越えようとする働きぶりに変わってきています。

 朝の会の話ではありませんが、バザーで自分達の商品を売る活動のときも、あらかじめ作業所で話し 合いをし「売上目標数」「役割分担」を仲間たちが決めています。その結果、バザーではあかりの仲間 たちの元気の良い売り声が響いて売り場は活気に満ち、商品が売れ残ると「駅弁スタイル」で行商して 回るという独自の販売方法も仲間の話し合いの中から生まれました。

 目標を共有することで、働く仲間同士で困難を乗り越える力や協力が育ってきていると感じます。

B自分の体調をみんなに伝える
 てんかんをもつ人達は、発作により体調が左右されることが多くあります。作業所では、朝の会の中 で「朝、発作があって頭が痛い。ボーッとする。」「昨日発作があって眠れなかった。」など、自分の発 作のことを伝えてもらっています。

 職場によっては、自分のその日の気分や体調の悪さは、なるべく周りに悟られないようにして働いて いる場合も多いと思います。しかし、作業所では一緒に仕事をする仲間に、発作を理解をしてもらいな がら働くことをすすめています。そのためには自分の体調や発作についてみんなに「伝えること」が必 要になりますが、それは仲間の健康管理を職員が行うためでなく、あくまで働く仲間たち同士が協力し 合いながら仕事をするうえで大事なことと思います。
C仲間一人一人の違い、個性を認める集団づくり
 「今日の体調」を話す時に、仲間によっては家であったこと、悩みなどを話す人もいます。また、テ レビ番組や芸能情報の話で、その日の朝の会が盛り上がることもあります。皆、自分が話題の中心にな る時は生き生きと輝きます。

 自分のことを色々話し聞き合うことで、仲間同士の関わりもどんどん広がっています。電車通勤の人 が電車の好きな人に時刻表を取ってきてあげたり、好きなゲームや漫画が同じだと知ると、その人に見 せたくて次の日には必ず持って来たり、ついこの前喧嘩をした相手に、(仲直りのしるしでしょうか) 将棋が好きだからと新聞の切り抜きを持ってきてあげたり… お互いの話をよく聞いているなあと感心す ることもしばしばです。

 又、家で親と喧嘩をした話をする人は、みんなに「そうそう」「うちも同じだ」と言って貰えるだけで 気持ちが落ち着くこともあるようです。

 うまく話せない人については、その人自身の言葉や表現を大事にしつつ職員が代わりにみんなに伝え ることもあります。職員は個々の仲間の個性を知る努力と同時に、得た情報を更に仲間集団に返し、共 有できる取組みに力を注ぐことが必要だと思います。

II.仲間が仲間を受けとめる
<朝の会に入れない人をめぐっての話し合い>
 Oさんは、感情が豊かでおしゃべりな人ですが、思ったことをうまく人に説明したり、人の話を理解 するのが難しい人です。思っていることをうまく伝えられず、仲間にわかってもらえないと、カッとな り大声でどなってしまうこともあります。

 その日も気になることがあって機嫌が悪いのに加え、仲間同士で盛り上がっていた話の輪に人れずイ ライラしてしまい、大声で暴言を吐いてしまいました。朝の会の時間になってもOさんは階下から上が って来れず、職貝が呼びに行っても、「頭が痛いから出ない」と言います。みんなに伝えるよう言うと、 「(朝の会に)入れん。下におる」と辛うじて言って、また下に降りてしまいました。

<Kさんの発言>
 それを聞いた仲間の一人からは「なんで朝の会に入ってこないんだ」と非難が上がりました。職員が 「なぜOさんは入ってこれないと思いますか?」とみんなに問い掛けると「さっきどなったから人りに くいんだよ」「どなるのが悪い。いきなりどなられてもわからない」など意見が出ました、「どうした らいいと恩いますか?」と再度間い掛けたところ、Kさんが、「誰かOさんに体調とか聞きに行ってあ げたらいい。それを又みんなに伝えてあげたらいいと恩う」と言いました。

 それは、あかりに通い始めて1年間ほど、Kさん自身が朝の会に入れなかった間、職員がとりくんで いたことでした。その後、Kさんは少しずつ朝の会に入れるようになり、今では生き生きと話ができる ようになりましたが、そのKさんが今度は朝の会に入れないOさんのために、自分がどうしてもらった ら朝の会に参加できたかを、みんなの中に意見として出してくれた瞬間でした。

 これには皆も「いいね。そうしたらいい」と言ってくれました。早速職員が体調を聞きに行き、「仕 事はできます」というOさんの言葉を、朝の会で伝えることができました。

 この日、もし職員がOさんをかばうだけだったり、反対に朝の会に参加できないことを責めたりしてい たら、Oさんは仲間の中で浮いたままだったかもしれません。しかし、仲間たち白身が意見を出し合い、 Oさんを理解する努力をしたことで、「皆が同じようにしなければならない」「決められたことはしな ければならない」といったことではなく、一人一人の気持ちや体調を分かり合おうとする気持ちがf巾問 の中に生まれたのだと思います。職員は困難をもつ仲間をありのまま受け入れるという徹底した態度を 貫く一方で、仲間同士の理解を進める努力もしていかなくてはいけないと思いました。


 仲間同士の関わりの中では、喧1噂や誤解が生まれることもありますが、問題が起きたときは、仲間同 士が話し合いを逓して解決していけるよう、仲間の集団作りが必要です。

 今の社会では、リストラなどで働く権利が奪われ、人が人として認められることが希薄になっていると 感じます。作業所では障害など様々な困難を抱えていても、人として認められ生き生きと働ける実践が 必要だと思います。

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