伊藤さんの本棚


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参考文献 ―精神薄弱児施設の職員のために―

このページの無断複製・転載はご遠慮下さい(1996.6.16)
はじめに

奄美大島の希望の星学園にいる時、保母さん有志と勉強会を始めた。その時、個人的に購入して手元にあった本の手書きリストをコピーして参加者に配った。これはそれをワープロで打ち直したものである。

参考までに購入した本屋のリスト
八重洲ブックセンター(東京駅八重洲口)、紀之国屋書店(新宿)、大盛堂書店(渋谷)、書泉、三省堂書店、東京堂書店(神保町)、星和書店ショールーム(八幡山:星和書店は精神医学関係の出版社で、自社出版物のみならず他社の精神医学ならびに周辺の出版物を置いている。専門家向き)

伊藤 文三

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総括的なもの (in 伊藤さんの本棚)

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精神薄弱の医学と教育

西谷三四郎 福村出版 1978.4
  初版 1984.7 7刷 221 pp.  ¥2,000

東京教育大(現筑波大)に特殊教育学科がつくられた昭和26年以来、四半世紀「精神簿 弱」と題して学生に講義を続けてきたその講義ノートを整理して出版したもの。 医学、心理学、教育学、社会学などが精神薄弱者のもっているニーズに対して協力して働か ねばならないと言われている。ところが、現実には、それぞれの領域の専門性が他の領 域に対して独自性を主張するあまり、相互の統合的活動が妨げられている。その統合への 第一歩として本書を出版したと著者は言っている。

昭和14年東京文理大 心理学科卒 昭和18年 千葉医科大学卒業
東京教育大学停年退職後 文教大学教授


学生・教師のための精神遅滞児要説
- 心理、教育、医学のミニマム・エッセンシャルズ -

東 正編著 川島書店 1985.3 初版 200 pp. ¥1,800

心理、教育、医学、福祉の立場からの執筆と同時に、最近の研究の動向の紹介を試み、 精神遅滞児についての総合的情報のミニマム・エッセンシャルズに視点をしぼ ったとある。各章12名が分担執筆、九州大、広島大、熊本大などの教育学、心理学系統 の著者が主。
編著者は大分大学教育学部教授。


心身障害児(者)心理・教育・福祉

吉田辰雄・原田信一 編著 文化書房博文社 S.60.4 初版 316 pp \2,800

編者吉田は教育心理、原田はに障害福祉専攻
心理・教育・福祉の三部構成、三者統一して理論と実践の両面から有機的に論述、主とし て精神薄弱児・重度重複障害児を、乳幼期から青年期ないし成人期に至るまでを発達的に 論じ、心身障害児(者)の心理学・教育学・福祉学専攻の大学短大生、特殊学級・養護学 校の教師、福祉施設の指導員、関連団体教職員の参考書として作ったとある。


講座・発達障害 第三巻・指導法(I)精神遅滞

小出 進責任編集 日本文化科学社 S.57.l2 初版 S.60.3 3刷 259 pp ¥2,200

全7巻の内第3巻以外の各巻は次の通り。(1)原因と珍断、(2)行動、(4)指導法II言語遅滞, 学習障害(5)指導法III 自閉症、(6)指導法IV 脳性まひ、(7)教育と福祉
精神遅滞児の指導法の原理・原則についての考え方がいろいろあって、教育現場で具体化 されている指導法も多様である。日々の教育実践にも混乱さえ見られ、この現状を憂慮し 精神遅滞児の指導において指向すべき方向性を、本書において明確にしようとした、とある。
責任編集者は、東京教育大特殊教育学科卒、現千葉大学教授


新・精神遅滞児の教育一その可能性と実践の手びき

波辺健郎 著 川島書店 S.59.8 初版 202pp

精神遅滞児の教育内容・方法などについて、最近の研究成果をふまえてその大要を示すだ けでなく、行動分析学をとりいれた具体的な指導に関しても紹介し、更にその視点から通 常教育の見直しと教育全般の改革の必要性を論ずる、とある。
筆者はS.31年東北大学教育学部卒、S.43年東京医科歯科大1年内地留学、国立特殊教育 総合研究所研究員を径て、横浜国立大学教育学部教授


障害児の心理と教育

寺田晃 著 放送大学教育振興会発行 放送出版協会発売 S.63.3 初版 205 pp \1,900

放送大学教材と同じ内容の一般市販用、著者は東北大教育学部 S.30卒。執筆協力者:村井 憲男(心身欠陥学専攻)、仁平義明(心理学、認知発達論専攻)、新谷守(視覚障害学専攻)、 大山正博(臨床心理学専攻)。全員東北大卒、障害児ということで次の各論からなってい る。§発達と障害、§感覚障害論、§身体運動障害論、§精神発達障害論、§学力障害論、


重度・最重度精神遅滞の実践指導

鈴村健治 著 川島書店 S.61.9 初版 S.63.3 2刷 227pp \2,400

長年重度最重度の精神遅滞児(者)の実践指導にたづさわった著者が、求刺激性という新 しい脳の機能的側面からのアプローチにより、脳の機能と行動のかかわりを考慮し、その 観点から感覚/知覚領域/教科/社会性/コミュニケーション/運動/作業学習/余暇/ 等における問題行動について、具体的な指導プログラムを提示し、実践上の問題解決の手 がかりを与えようとしたものである、と紹介されている。


精神遅滞児の病理・心理・教育

山口 薫、上出弘之 著 S.63.2 初版 東京大学出版会 256pp ¥2800

「精神薄弱の教育」の書名で昭和41年出版され、版を重ねたが、S.54年養護学校義務制の 実現などその教育に大きな変化がおこり、その間共著者2名も死亡、残った二人で、全面 改訂版として、書名も改めて出版したものとある。山口 薫は、東大心理学大学院S.30卒, 東京学芸大教育学部教授(但し執筆当時。停年退職後帝京短大教授)NHK教育テレピの 「発達相談」の番組等に良く顔出ししていた。上出弘之はS.23年東大医学部卒、東京都児 童相談センター所長。最近これだけ広く纏まった類書は出版されていないのではないかと 思う。東京学芸大の附属養護学校(小・中・高)の時間表、指導要領等も掲載されている。


5つの類型化による精神遅滞帯児の教育理論と方法
一発達・生活・行動の原理とその指導法入門−

西本順次郎、東 正 編著 川島書店 S.63.7 初版 207pp ¥2500

日頃精神遅滞児の教育と実践にとりくんでいる研究者が協同して、精神遅滞児の教育理論 と方法をわかりやすく整理し、体系化するため、まず、セガン、ドクロリー、ダンカン等 18の学説を選び出し、それらを古典的生理学的教育、生活主義教育、教科主義教育、現 代生理学的教育、行動主義教育の5つに類型化して、その変遷と教育実践の中から発達 ・生活・行動の原理と指導法を明らかにした、とある。
ここに書かれていることは、一応心得ておく必要があるだろうが、いろんな人が、 いろんな理論で、いろんな実践をしており、いやはやしんどい事である。


発達診断と障害児教育

荒木穂積、白石正久 編 障害者問題双書 青木書店 H.元年11 初版 254pp \2266

全国障害者問題研究会京都支部主催による「発達診断講座」のなかで「可逆操作の高次化 における階層一段階理論」と、豊富な発達診断実践に基づき、関西在住の若手研究者の執 筆によって、各年齢レベルの発達的特徴が詳述されているのが本書の特徴、とある。
「レッテルはり」や「選別」のための検査でなく、発達保障の観点にたった発達診断が広 がり「子どもがとらえにくい」「多忙である」「上からの管理が強い」等々障害児教育実 践現場の教師が自主的研究がやりにくい実態にあって、教師の研修権の内実が整えられ、 発達診断と教育実践が正しく結びつき、豊かな教育実践が展開される事を願って本書が刊 行された、と難しい理屈が述べられている。
文部省が嫌いな日教組の立場のものであるが、「発達保障のための発達診断」の立場は 反文部省の人からの批判もある。


うちの子に限って
一異常性発見234のチェックポイント一

大原健士郎 編集 現代のエスプリ別冊 至文堂 S.48.5 版 331pp \1290

0才から20才までの幼児から青年になる成長期に発生するさまざまな「こころ」と「か らだ」の異常を、症状として表出する前に予知し、対処するためのガィドブック、とある。
項目は,I.中学生まで:0才まで(よい子を生むために):自閉症:知恵遅れれ :かん黙症(無言症):神経症(性発症):登校拒否:非行・犯罪 II.20才まで :そう鬱病:精神分裂病:成人の神経症:登校拒杏:自殺:家庭内暴力,校内 暴力:非行、犯罪:喫煙と飲酒:異性関係
各項目は、次の構成、疾患(状態) 成因(発生起序) チェックポィント 対応と治療
編集者大原健士郎は浜松医科大学教授。自殺に関する研究で有名。 それぞれの専門家(精神科医が多い)17名が分担執筆。
「現代のエスプリ」は、雑誌体裁でテーマごと刊行され、200点あまり刊行済。 例えば,「アィデンティティ」「自閉症」「ホスピスと末期ケア」「母親」など。


精神薄弱児の心理

松岡 武 著 福村出版 S.51.1 初版 S.57.4 4刷 155pp \1600

昭和51年より、山梨大学で1年制の臨時教員養成謀程(精神薄弱教育)が開設され(大学 時代障害児教育を殆ど学ばなかった者を入学させ1年で障害児教育の専門家を仕立てる目 的)この課程の者と学部の学生に、1年間「精神薄弱児の心理」を講義、その講義案をも とに作ったテキスト、とある。著者は、S.25年 東京文理大心理学科卒、教育心理学、異常児心 理学、精神衛生学等を専攻。学生対象だから特定の立場に偏らないようにしたとあるは 当然として、心理学者が精神薄弱児をどのように見ているかが判る。また、S.51年、今から 10年以上も前に書かれたものである事を考慮する必要があるように思う。


障害児臨床心理学

片山義弘、生和秀敏 編 ブレーン出版 S.51.1 初版 S.59.4 2刷 218pp \1500

臨床心理学の立場から、障害児教育や福祉を学ぼうとする学生、および未だ経験の乏しい施 設職員や教師のための理論と実践を判りやすく解説し、障害児に対する取り組みを容易に することを狙いとし、障害児臨床学の体系化をはかる、とある。
著者片山は広島文理大心理学科S.27卒、広島大学教育学部教授。 生和は広島大教育学部心理学科S.41年卒、広島大学総合科学部助教授。 三次市の自閉性障害児施設「ともえ学園」の活動と記録がI章設けて掲載されている。
臨床心理学は一つの法則性を求める事を目的とするより、多様な臨床経験を持つことが 重要で、問題行動にあって優れた治療法を見出すことを目的としていると書いてあるが、 臨床心理学は学問か という疑問をなげかけている人もいる。


子どもの心理と精神衛生

十島やす蔵 著 ナカニシヤ出版 S.60.4 初版 239pp \1800

学会の共通財産として認められている事実や理論は出来るだけ公平に取り上げ、保母資格 を取得するためのテキストとして、児童心理学と精神衛生を一冊に収めたとある。従って 保母の資格を持っている者は、この本に書いてあるようなことを知っている筈という解釈 も成り立つ。勿論特に障害児について書かれたものではない。
著者は鹿児島大学教養部教授、知恵遅れの息子さんあり、生涯学習が必要と、大学と称 する知恵遅れのための塾を鹿児島に開校。また大島養護学校の父兄会で講演された事がある。


発達障害児の心理臨床

成瀬悟策 編 九州大学出版会 S.60.4 初版 373pp \4200

脳性マヒの子の動作の研究と訓練指導法の開発を20年間続け、動作訓練法の効果を確 認、別個のものとみられてきたさまざまな障害児に脈略をつけ、障害児のもつ別個、独自 の特性を問い直し、基本的特性と問題点を明確にすることを目的とする、とある。従って 内容は次のようになっている。§1.発達障害児 §2.精神薄弱児 §3.脳性マヒ  §4.自閉症 §5.多動児 §6.重度障害児 §7.発達障害児の精神病理  §8.発達障害児行政
昭和58年度九州大学教育学部の公開講座「障害児研究会」として講義されたものを基礎 として重要項目を追加したもの。
編者成瀬悟策ば九州大学教育学部教授、実質編集者山下功は、障害児童学講座担当教授。 執筆者全部で22名 気楽に読めない学術書であるが、要するに、脳性マヒに効果があった「動作訓練法」を、 他の発達障害児にもやってみて効果があった、というところか。


やさしい子どもの精神科

佐藤尚信、矢野徹 著 星和書店 S.53.2 初版 S.60.5 9刷 329pp \1600

臨床の場で、精神科の医者としての説明は難しく、説明がたりなかったり誤解をまね いたりすることがある。そこでなるべくわかりやすく書かれた、子どもの精神科の解説書が あるとよいと考えたのが執筆の動機、とある。また次のように書いてあるのに好感がもてる。 「私達は子どもの精神科医として診療をやっていて、さまざまな立場の人、つまり両親、 教師、ケースワーカーなどの人とかかわり合い、批評したりされたり、両方の立場を経 験しており、そのことがこの本を書く上でかなり影響しています。つまり、やたらにラッパ を吹いて両親や教師などの方々に負担をかけ、うまく行かねばその人たちに責を負わせる ような態度は避けたつもりです」と。
あまり正確を期するため細かく書いてかえって誤解をまねくのを避け、大筋を理解しても らうため、割り切れないところを思いきってわりきった表現もある。従って識者の批判も あろうと思う、と。「てんかん」の項などは、てんかん専門医が書いたものより、てんかん という病気について理解しやすいように思う。
著者佐藤尚信は千葉大医学部S.33年卒、千葉労災病院精神科。 矢野徹は千葉大医学部S.40年卒、千葉大精神科助務


教育と医学

教育と医学の会編集 雑誌 (本部九州大学教育学部内)

毎年12月号が「精神薄弱の教育」特集号になっており、毎年開かれている御殿場コ ロニーセミナーの報告がのっている。昭和60年、61年、62年、63年、平成元年、各\500。 63年12月号に、わが国自閉症例第一号を発表した中沢たえ子(旧姓 鷲見)の「自閉症の 精神病理学」の講演要旨がのっている。


児童期の精神科科臨床

若林槙一郎 編 金剛出版 S.58.2 初版 345pp \5800

児童精神科の草分け(昭和11年)ともいうべき名古屋大学児童精神科の半世紀にわたる伝 統に立脚し、臨床的に重要な問題を絞り、症例を中心とし、診断・症状・経過・治療及び 病因・予後にわたり詳述、臨床実戦に役立つ専門書とうたってある。
一般精神科のみならず児童精神科と最も密接な関係にある小児科医、更に他科の医師・学 生に役立つことを願うと同時に、臨床的問題は実際にかかわる看護者・臨床心理家・ケー スワーカー更に保育や教育の関係者・児童福祉関係者などにも役立つように、記述に配慮 した、とある。この文章を読み、専門書にかかわらず買って読んでみようと思った。 内容は、§1.児童精神医学の現状と問題点、§2.発達、§3.発達障害(精神遅滞・ 自閉症など)、§4.中枢性障害(てんかん・多動症候群など)、§5.神経症的問題(異常 行動・心身症・ヒステリーなど)、§6.精神病、§7.治療の実際、§8.予防
我々が読んでも全く理解できないというようなことはなく、症例が多いので結構面自い。 なお、昭和27年名古屋大学精神科の鷲見たえ子(現中沢)が自閉症例の報告を行い、 大きな反響をよんだ。わが国における自閉症第一号である。


心身障害児の療育相談
一親と職員のために、児童精神科医のアドバイス一

安藤春彦 著 有斐閣 S.59.9 初版 220pp \1400

正しい療育の方法とは,生身の人間である親や職員の強さと同時に弱さもきちんと洞察し た上で、何が出来るか、何が出来ないか、を明示したものである筈で,療育は現実的な営 みであり実用的な方法でなければならないし、障害児の発達面で明らかな効果をあげない 限り意味がないというのが著者の基本線。
いろいろ設問し、それに答える形式。例えば、§5.育て方としつけ、(1)障害児の育て方 (2)しつけの基本方針、(3)食事のしつけの要点、(4)排せつ、(5)着脱衣、(6)歯みがき、(7)母子 分離。(1)障害児の育て方の回答内容は次の通り。☆幼児に主体性などない、☆子どもの個 性にあわせて指導せよ、☆甘やかすかきびしくか、☆子どもをよく受け入れけじめをつけ て育てる、☆しつけは押し付けである、☆迷う親ほど強い親、☆子育てによって親も育つ、 ☆子どもがかわれば親もかわる、☆親は教師になる必要はない、☆親と職員との役割は異 なる、☆親を責める指導者は指導者の資格がない、☆療育に手遅れはない。
療育のプロと称する人の大半は心理学系統の人であり、それらの人の言っている事、 やってる事とここに書かれている事はかなり違ったところがあるように思う。私は、 どちらかというと、この本に書かれている事に共鳴した。


障害児の医療相談

長瀬又男 著 日本文化科学社 S.60.7. 初版 212pp \1400

著者はS.18年慶応大学医学部卒、陸軍短現軍医、復員後九州大小児科、S.48年東京学芸大教 授(特殊教育学科の学生に対し「小児医学」は必須履修単位)、定年退職後、賀川学園長、 小児・神経・精神科の長瀬クリニック開設。
97の質問を設け、それに対しやさしく答えている。 §1.障害児とは、§2.心身障害の種類、§3.障害児の健康、§4.誕生から成人ま で、§5.朝から夜まで、§6.四月から三月まで、§7.心身障害に伴う病気、 §8.医療機関の利用の仕方、§9.家族、保育者および教師の健康。
なお、§2の心身障害の種類は、A.知恵遅れについて、B.ダウン症候群について、 C.先天性代謝障害について、D.肢体不自由について、E.自閉症について、F.言語 障害について、となっている。
前記安藤春彦著「心身障害児の療育相談」と似たようなものだが、児童精神科医と小児科 医の違いとでもいうようなものを感じる。


児童精神衛生マニュアル

松本和雄、吉田てる延 著 日本文化科学社 S53.7 初版 S.60.3 新訂 244pp \2500

医師、保健婦、看護婦、医学生、教師、保母、サイコロジスト、ソーシャルワーカー、指 導委員、そのほか日常臨床業務に携わるスタッフから出された疑問、質問、要望をもとに内容 を企画したので、浅く広く実用的な便覧の体裁にまとめた。児童臨床の実践で多くの人々 にすぐ役立つよう用語の選択も配慮、関連領域で臨床上必要な成果は出来る限り引用、特 に関連法規や施設、小児科学の基礎知識およぴ最近の医学知見は努めて取り人れた、とある。
実用的便覧の体裁で確かに便利だが、浅く広いためか我々にはちょっと使いこなせない ところがある。著者松本和雄はS.40年大阪大学医学部大学院卒、関西学院大教授。 吉田てる延はS.30年京大教育学部卒、大阪市立小児保健センター主査。


児童精神医学の臨床

佐々木正美 著 ぶどう社 S.61.3 初版 270pp \2800

著者はS.10年生まれ。新潟大学医学部卒業後、ブリティッシュ・コロンビア大学児童精神 科、国立秩父学園、東大精神科勤務を経て、神奈川県児童医療福祉財団・小児療育相談 センター所長、東京女子医大小児科、東大精神科講師。
児童診療の末端ともいえる地域療育機関を中心に(一部大学病院で)働いていた活動報告 のようなもので、それぞれの医学専門誌の編集者からの依頼に依って書いたものを、出版 社が系統分類して配列したもの、と説明されている。内容は、 §1.自閉症と児童精神医学、§2.ノースカロライナの自閉症治療教育プログラムに学 ぶ、§3.心身障害と児童精神医学、§4.現代の子どもたちと児童精神医学、 §5.ノーマリゼーションと地域活動。
著者佐々木正美は、かつて自閉症研究家の若手四人衆といわれたうちの一人、今や中堅 である。四人衆とは、中根晃、佐々木正美、十亀史郎、山埼晃資。そのため、自閉症 に関するものにウヱイトが置かれている。


児童精神科のお話
一自閉症・多動・登校拒杏・うつ病・自殺を診る一

高木隆郎 著 合同出版 S.60.2 初版 S.61.2 2版 226pp \1500

朝日新聞発行の医師向け雑誌「モダンメディシン」にS.57.10〜S.58.10まで掲載され た「児童精神医学から」というシリーズが下敷きなので、本来は第一線の臨床にたずさわ る一般科の医師を対象とした児童精神医学の啓蒙書であるが、もう少し一般的読者層まで 広げてはという出版社の意向によって改稿したもの、とある。
書店の棚の専門的な医学書と家庭医学書との間にあるギャップにあらためて気付き、この ように独占された知識こそが「自閉症」に関する誤解と偏見でなかったかと驚き反省し、 かなり高度のものを合んだ最初の原稿を改稿したが、結局多少の解説を加えて判りやすく した程度で一般読者に不親切なものになってしまったと著者は言っている。自閉症などに 対し、医師も一般市民もあまりにも無知で無神経な記述が多いので「自閉症に正しい理解 を」と自閉症に関したことに、トップでかなりスペースがさかれている。
ここに書かれているような事を、一般の医師が啓蒙されなければならないのか、いささか 驚きである。
筆者は京大医学部S.28年卒、京大在職30年、S.35年「児童精神医学とその領域」誌創刊、 日本児童精神医学会発足に貢献。


ちえ遅れのこころの問題事典<事例式>
−児童精神科医30年の歩みから一

飯田 誠 著 学習研究社 S.60.3 初版 221pp \1400

筆者は次のような考えだと言っている。「かなり能力をもっていると思われる軽度のちえ遅 れの人でも、実際よく接してみると、生活している世界の次元が低いことが判り、我々の 次元でしか彼らを考えていないため、やたらに難しいことを考えてばかりいてかえって解 決がつかず、理解困難な専問用語のパズル遊びをしても、現に困っている症例の解決には ならない。健常者が高い所にいて、彼らにここまであがってこいというような事をしてい るのは、彼らを馬鹿にしたやりかたではないか。健常者がちえ遅れの人たちの世界に下り て行って、彼らの世界に入ってこそ彼らと共感を持ちながら指導する事が可能だろう。彼 らにとって煙たい存在ではなく、ある程度無責任で、ある程度たよりになる存在となり、 あまり責任をとりすぎると、彼らはかえって圧迫を感ずる。彼らがチャランポラン人生なら こちらもチャランポランの方か良い」と。
チャランポランとは、関西弁で「いいかげん」という意味だが、単なるマィナス・イ メージではなく、人間らしい生き方のチエみたいなものを感ずる語感である。私目身チャ ランポランなところがあるので、著者に大いに共鳴するところがある。人間の「いいかげんさ」 を真似した「ファジー理論」がコンピュータに応用され注目をあび、人工知能開発に一役 買おうという世の中である。


精神科治療学 一学術雑誌―
〔特集〕小児精神障害の発達と転帰

星和書店 Vol.1 No.2 Apr 1986 \2600

障害者の中高年・成人についてのものはあまり見掛けないので、学術論文であるが、敢 えて購入したもの。掲載論文次の通り。 ☆成人になった自閉症児、☆働く自閉症児の生活様式の特性、☆幻覚妄想症状を呈する年 長自閉症、☆多動児の予後、☆中高年に達した精神遅滞者一特にダウン症について。


障害乳幼児の発達と医療
一医療・保育・福祉・生活一

堀江重信 編著 青木書店 S55.11 初版 S.61.7 12刷 350pp \2800

全国障害者問題研究会や障害者の生活と権利を守る全国協議会の仲間、その他多くの仲間 達に学びながら、零才児から中学生までの数百人の子どもの療育に取り組み、その家族と 共に、発達保障への道を模索してきたが、今日までの取り組みの「中間報告」ともいうべ きもの、とある。内容は、
序章、障害児医療のありかた、I.神経のつくりとはたらき、 II.正常な運動発達のしく み、III.障害の原因から治療のあらまし、IV.障害児の健康管理、V.ことばのおくれ、 VI.知恵おくれ、VII.脳性まひ、VIII.自閉症、XI.徴細脳障害症候群、X.てんかん. XI.乳幼児の発達と保育、XII.障害児の家族の生活と福祉。
編著者は、名大大学院医科S.38年終了、みなみ子ども診療所長、南生協病院副院長。 いわゆる、「発達保障論」の立場にたって書かれたもの。


障害の医療と療育
−臨床小児科医のカルテから−

堀江重信 著 障害者問題双書 青木書店 S.62.10 初版 210pp \2000

生物学的レベルでの障害があっても、それを生活レベルでの能力障害や社会的不利にしな いため、私達は何をすればよいかと言うのが本書のテーマで、昭和58年全国障害者問題研 究会第17回全国大会において、入門講座医学関係を担当した時の抄録を土台とした、とあ る。前記「障害乳幼児の発達と医療」の出版から7年たっており、その間あった症例など いろんな問題を付け加えた、という。前記の本の全面改定版ではなく、それを生かしての延 長線の本といえるだろう。内容は、
1.障害と診断について、2.医学的に治療出来るものの見逃しは許されない、3.障害 は生後すぐ見つかるとは恨らない、4.障害は一つとは限らない、5.感覚の障害は発達 に大きく影響する、6.障害の神経生理学的理解を深める、7.治療ということ、8.治 療はいろんな理由で阻害される、9.健康管理は障害を軽くする、10.障害児は正常な発達の 道筋をたどるとは限らない、11.発達指数は不変ではない、12.正しい治療の継続。


知恵おくれの生理と療育
―先天性代謝異常を中心に―

柏俣重夫、加藤孝信 著 障害者問題双書 青木書店 S.62.7 初版 264pp \2200

代謝異常が原因でおこる知能障害に焦点をあて、生理的メカニズムを説き、子どもたちの 症状や発達の状況。治療。予防への取り組みを事例をあげて解説。 生理的メカニズムの解説は、素人にはいささか煩雑で難解。 フェニルケトン尿症やクレチン症が主で、ムコ多糖症も解説されている。


教師のための医学知識
―発達の遅れと教育― 雑誌・特集号

日本文化科学社 1988.7 臨時増刊号 \1000

「発違の遅れと教育」は、全日本特殊教育研究連盟の機関誌で、幼稚園・保育所・小学校 ・中学校・盲学校・聾学校・養護学校・障害児の福祉施設等で、精神遅滞、自閉症、言語 遅滞、脳性まひ、学習障害などの障害をもつ幼児・児童・生徒等の教育実践に取り組んで いる方々に、真に役立つ情報を提供することを目ざしている、とうたっている。
本誌は、発達の遅れのある子どもの教育現場において、教師に是非知っておいてもらい たい基礎・基本的な医学知識について特集。
1.発達障害の原因(15項目)、2.医学的診断・検査(9項目)、3.伴いやすい疾患・病態 とそれへの対応(20項目)、4.薬物治療(8項目)、5.応急措置(18項目)、6.教育活動の なかでのQ&A(18項目)
88項目にわたって、それぞれ専門家32名が執筆、それが168頁におさめられている。ここ に書かれていることを覚えて(暗記して)、わかったつもりでふるまわれては困るなという 気がする。


親こそ最良医師
―ドーマン博士はいかにして脳障害児を治療したか―

グレン・ドーマン 著 幼児開発協会訳 サイマル出版会 S.49 初版 346pp \1500

学園にくる前、会社人間時代に福祉には特に関心はなかったが、ドーマン法とい名前は聞い たことがある位、ジャーナリズムにとりあげられていた。どんなものなのか通勤電車の中で 読もうと、神田の古本屋で 300円で購入した。惹句に「脳障害の治療と幼児の才能開発で世界的に著名なドーマン博 士が、中傷と無理解に屈することなくついに画期的療法を見出し、多くの『奇跡』を実現した 25年の体験を率直に語った感動の手記」とある。あまりの宣伝臭さに丁寧に読む気がしなか った。ドーマン法は、信奉者はいるが現在あまり流行っていない。


自閉症関係 (in 伊藤さんの本棚)

大書店の障害関係の棚を見ると、自閉症関係の本は意外に多く目に付く。一 時流行のように(昭和50年代)学者がこぞって自閉症に関する論文を発表したようだが 、それは自閉症というものがよくわからない面が多く、学者たちの学問的興味をそそり、 また症例面でもその療育が困難で五里霧中であったためかもしれない。 学園には,はっきり自閉症と診断された子どもはいないが、児童相談所で「自閉的傾向」 というレッテルをはられた子は何人かいる。自閉症に対する考え方は、その基礎には精神 発達障害児に対する考え方があり、自閉症関係の書物に目を通すことは知恵遅れの子ど もに対処する上に参考になると思われる。そんなわけで、結果的には結構い ろんな自閉症の本を購入した。

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「自閉」の本九十九冊

阿部秀雄、鈴木佐江子、荻野俊子 著 学苑社 S.59.2 初版 239pp \1600

昭和58年現在までわが国で出版された自閉症に関する158冊のうち、絶版など除き現在入手 可能な127冊について、治療教育理論、指導実践、親の手記、など21項目に分類し、内容 紹介と共にその著者の理論を解説したもの。一つのテーマの「事典」的なものとして、 出版界で若干の注目を浴びた。著者は、つくも幼児教室の職員で、室長の阿部はS.35年 東大教育学部教育心理学科卒(改訂版が出版され、増補されているらしい)。


新らしい「自閉」の本

季刊 自閉症研究 第1巻第3号 自閉症研究センターちば S.62.3 \500

『「自閉」の本九十九冊』以降3年間に出版された40冊あまりの内38冊の紹介。 発行年別全リストが掲載されている。「季刊・自閉症研究」は、本巻をもって閉巻。


自閉症児のための抱っこ法

阿部秀雄(日本抱っこ法協会会長)著 学習研究社 S.63.4 初版 221pp \1500

先の「九十九冊」の読後感を著者に送ったところ、返事頂く。自著としてこの本が紹介さ れていたので購入したもの。
昭和30年米国心理学者ザスロウ博士、J.アラン博士によって提唱された自閉症児の教育 、自閉症状の改善を目的とする心理技法・教育技法の日本版ともいうべきもの。 抱っこ法を通じ、おとなと子どもの相互交流がどのようになるかを読者に伝えようとした が、理論の部分が弱いので、巻未の参考文献で補強してくれ、理論武装の大切さは強調し てもしすぎることはない、と著者は断言しているが、どうも「理論」をどのように考えて いるのか、口先だけのような気がする。著者は自閉症療育のいわゆる受容派に属し、この本を 読んで感動しても、それは単に実践記録の域を出ず、「自閉症のため」と一般的理論的に いえるか疑問のように思う。


自閉症児への架橋
一どう理解し、どう導くか一

安藤春彦、山崎晃彦、白橋宏一郎、猪俣丈二 著 医学書院
S.58.3 初版 S.59.9 2刷 352pp \3200

先の『「自閉」の本99冊』で、精神科医の書いた本として紹介されているので、紹介 する。
4人の精神科医で自閉症の療育をめぐるさまざまの質問に答えるという形で執 筆したもの。質問は最初の「この障害は自閉症なのか」で始まり、最後の「自閉症児の年 長化と親の老齢化をどう考えるか」で終わっている。回答は明快でわかりやすく、読者の 切実な関心にどこまでも具体的に答えようとする姿勢がみえる。かといって明快な回答を 追うあまり、安易な希望を抱かせることを避け、しかも過度の悲観論に陥ることなく、長 い実践の試練を経た客観的事実に語らせるというのが著者らの基本姿勢、という。
「99冊」の紹介では触れられていないが、「架橋の途次ペンをおいて」という、4人の執 筆者の座談会が最後にある。司会者(医学書院、中川)が後記で次のように書いている。 「各執筆者には全原稿に目を通していただき、率直な意見交換によって執筆間のソゴを少 しでもなくすように努めていただいたが、臨床上の微妙な見解の違いもよみとられた。それ らは執筆者のおかれた施設の違いも大きく作用しているのであろう。ここに自閉症医療の立た されている歴史性と疾患そのもののはらんでいる深淵を垣間見るのは、半可通の不遜にす ぎるであろう」と。私は、司会者のこの言葉と同じような感を抱き、4人の執筆者の カモシモを脱いだ、ざっくばらんな座談会を大変興味深く読んだ。
安藤春彦 S.33 名古屋大学医学部卒、愛知県心身障害者コロニー中央病院副院長
山埼晃彦 S.37 北海道大学医学部卒、東海大学精神科助教授
白橋宏一郎 S.26 東北大学医学部卒、国立仙台病院副院長
猪俣丈ニ S.34 慶応大学医学部卒、湘南福祉センター所長
(猶、この本は学園の購入図書リストにあるが職員室その他に見当たらない)


自閉症の臨床一その治療と教育一

中根晃 著 岩崎学術出版社 S.58.10 初版 S.60.7 2版 224pp \3500

かつて自閉症研究家“若手”4人衆−中根晃、佐々木正美、十亀史郎、山崎晃一は、今 や中核的存在となり、そのうちの一人云々と牧田清志は紹介している。著者の前著「自閉症 研究」(S.51年)で新しい原因論の台頭を強調した上で「コペルニクス的転回」という著 者の表現は、あまりにも有名ということである。4人衆の一人佐々木正美(小児療育相談 センクー所長)は、まえがきで次のように書いている。「5年前、著者はその著作『自閉 症研究』によって、わが国における自閉症概念の混乱を整理する上で大きな役割を果たし たが、今度はまた本書によって、その治療教育のありかたに真の科学的観点を当てること になった。不勉強による独善的な治療や教育は言うに及ばないが、心因論のような過去の 誤った仮説による方法も、もはや今日にいたっては許容され得ないとする厳しい姿勢が行 間に感じられて、私は胸を打たれ続けなから読んだ」と。我々には、いささか難しいが 丁寧に読む必要のある本の一つと思う。 筆者はS.32年東京医科歯科大学卒、東京都立梅ケ丘病院副院長(精神病院で児童棟あり)


自閉症の研究と展望

山崎晃資、粟田広、編 東京大学出版会 S.62.5 初版 319pp \5200

自閉症研究のこれまでの到達点を明らかにし、今後の謀題を提示することが、とくに、幼 児自閉症の臨床に関して自由な役割を担ってきた児童精神科医の責務と感じた。それぞれの 専門領域で臨床と研究に精力的に取り組んでいる児童精神科の医師に呼びかけ、昭和61年 熱海で行われたワークシヨップ「自閉症の研究と展望」にもとづくもの、とある。個々の発 表のみならず、ワークシヨップの熱気を読者に伝えるため、それらに対する参加者による 討論も各論文の後に収録したという。各論文は次の通り。
☆自閉症研究の歴史(山崎晃資)、☆乳幼児の発達と行動−主として自閉症と他の発達障害 との比較研究から(小泉毅)、☆学童期および思春期の問題一思春期をいかにのりこえて社 会的自立を獲得して行くか(若林慎一郎、杉山登志郎)、☆自閉症の医療一児童精神科の役 割(設楽雅代)、☆自閉症の認知障害(太田昌孝)、☆自閉症児の言語障害と半球機能の一側 化(林雅次)、☆自閉症の神経生理学的研究(滑水康夫)、☆自閉症の発達神経心理学的研究 (白滝貞昭)、☆中枢神径アミンの研究(松田文雄、林時司)、☆幼児自閉症における薬物療 法の有用性と限界(星野仁彦)、☆自閉症、その精神病理学と治療(中根晃)、☆幼児自閉症 の臨床的類型について(粟田広)(白橋宏一郎討論参加)
医学論文であるので、われわれ素人にはわからないところもあるが、全くチンプンカ ンプンというわけでもない。特に、各論文のあとのその論文についての討論がわれわれにも 理解出来て非常に有益で、面白い。


自閉症の言語治療

作田勉 著 金剛出版 S.62.5 初版 153pp \2800

自閉症についての多くの著作は、治療にさいているページが少なく、その治療の難しさに より治療の体系化に乏しかった。そこで治療に重点をおいた著作の必要を感じ、本書を 書いたという。
自閉症に接した時、1.対人関係の障害、2.言語関係の障害、3.常動的動作等の行動的問題 の三領域に直面する。この領域を、独自に治療してゆく分断的治療方針も、全体を一括 して治療出来るとの単純な方針もとらず、相互関連性があるから、発達レベルをまず調ベ、 それから発達レベルに応じた総合的治療を開始し、治療段階に応じて個別領域の集中的治療 をも併用するという立場をとっている。言語治療に焦点をあてたのは、自閉症児が受診す るに至る最大理由のみならず、自閉症状の中核存在でもあるからであるという。 著者は、「言語」について特に関心か深いらしく、彼の編集になる「精神医学と言語学」 という本がある。S.43年、慶応大学医学部卒、同附属病院精神科勤務。


幼児自閉症の臨床

星野仁彦、熊代永 著 (最新医学文庫) 新興医学出版 H.元.7 初版 178pp \3914

幼児自閉症の臨床面、特に早期発見の方法、診断基準、鑑別診断、臨床症状のとらえ方、 治療方法、経過と予後、などについて、過去の文献を総括的に網羅すると同時に、最も最 近の知見も紹介したとある。
実際の症例を経験してない医家にとっては、自閉症に関する従来の専門書は一般に難解で 近付き難いものだったので、出来る限り平易な判りやすい表現をするよう心掛けた、とある。 しかし医家向けであるから我々素人にとって難解なところもある。ただ、自閉症に関する まとまった本と言える。著者は福島県立医科大学の教授と講師。


自閉症

玉井収介 著 講談社現代新書 講談社 S.58.7 初版 186pp \480

著者の基本姿勢は次の通り。精神衛生研究所、特殊教育総合研究所の二つの国立研究所で 外来相談の形でさまざまの問題をもつ子に接してきたが、その中で自閉児というのがもっ とも難解な問題で、私なりに努力したつもりだ。しかし、こうすればなおるという方法は見出し 得なかった。残念ながらそれは事実であり、事実であると認めて次の一歩を考えることが すこしでも未来への前進の土台となる、と。
次の各章から成っている、§1.自閉症とはなにか、§2.自閉児のコミュニケーシヨン、 §3.自閉児の自我の構造、§4.自閉児の行動をどう理解するか、§5.自閉からの脱却。
一般教養図書とうたっている「講談社現代新書」(数百点既刊)のうちの一冊として刊行 されていることに注目したい。


自閉児指導のすべて

執筆者約40名 全日本特殊教育研究連盟編 日本文化科学社 H.元.7 初版 165pp \1300

自閉症あるいは自閉的傾向をもつ子どもが多数養護学校、特殊学級、福祉施設などで教 育されている現在、自閉症に関する医学的、心理学的、教育学的研究の進展をふまえて、 現場の先生方に自閉症に関する最新情報を知ってもらうのが重要である。全日本特殊教育研究 連盟の機関誌「発達の遅れと教育」の臨時増刊号として「自閉児指導のすべて」を1986年 に刊行したが、好評で入手したいという要望が強いため、その後の最新情報を盛るため若 干補筆し、「基礎編」「実践編」のそれぞれに総論を添えて一冊として刊行した、と、連盟 理事長山口薫(先に挙げた〔精神遅滞児の病理心理・教育〕の著者)がまえがきで書いて いる。
I.基礎編一自閉に学ぶ。総論、1.原因と診断、2.発達と評価、3.治療・指導技 法、4.教育計画、II.実践編一自閉の子をはぐくむ。総論 5.言語とコミュニケーシ ョン、6.認知と学習、7.運動、8.身辺生活と集団参加、9.社会生活、10.行動の偏り。


自閉症児の治療教育と社会生活

−TEACCHプログラムの要点と指導のポイント- 90朝日集中講座

7月25日、東京中野公会堂で開かれたのを受講した。(名古屋・大坂・福岡でも開催)
●「基調報告」・・・・・佐々木正美
●「自閉症児治療教育の実際と研究」・・・・・エリック・ショプラー(Eric Schopler)
●「一人ひとりの子どもに合った治療教育プログラムをつくる」・・・・・マーガレット.ランシング(Margaret Lansing)
●「コミュニケーションと社会性の発達をめざす」・・・・・キャサリン・ロード(Catherine Lord)
●「これまでの努力,これからの努力」・・・・・ピル・ストグナー(Bill Stogner)


親のためのTECCHPプログラム
教師のためのTECCHPプログラム

朝日福祉ガイドビデオ −ノースカロライナ州にみる自閉症治療教育

TECCHPはTreatment and Education of Autistic and Related Communication Handicapped Children の略。ビデオは高いのでテキストのみ購入。各¥500


大人になった自閉症児

朝日福祉ガイドブック 朝日新聞厚生文化事業団 90.7 71pp \500

自閉症児が大人になり、施設で、家庭で、作業所で、彼らなりに生きている姿と、それを 支える人々の大変さを追っかけたルポー。☆すべてが勉強の毎日、☆会社と親の熱意が支え ☆給料でステレオ買いました☆がんばるお母さん、☆アメリカン・クッキーに夢を、☆ 作業所をバネに、☆グループホームをめざす仲間たち、☆社会の−員として、☆あふれる エネルギー。
「大人になるまでにこんな指導があれば」という視点で、
自閉症児の社会適応への働きかけ 岡田正幸
自閉症児のラィフスタイルと療育目標 志賀利一
以上の内容になっている。



てんかん関係 (in 伊藤さんの本棚)

てんかんに関するする本はかなり出版されている、てんかんという病気が複雑であるた めもあり読むのに苦労し、難解なものが多い。学問的にちゃんと書こうと思うためか、やた らに詳しく肝心の焦点がぼけてしまうということもある。日本てんかん協会編「てんかん 講座」全8巻(内5巻まで職員室にあり)など執筆はおもににてんかん学権威を揃えているが、 我々素人はちょっと読む気がしない。
精神発達遅滞の本には必ずといってよいほど「てんかん」の項があり、簡単に書いてある が全体をつかむにはかえってよいということもある。てんかん学の古典的なものを読むゆ とりなどないので、なるべく最近出版された手頃なものということになる。

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てんかん病
一専門医からのアドバイス―

和田豊治 監修 掛川紀夫 著 真興交易医書出版部 S.56.7 初版 S.61.8 4刷 241pp \920

本書の目的は次の三つにある。1.良いてんかん医とは病状をさりげなく、しかし患者に わかるよう伝える能力を持った人、実際は時間かないので、足りないところを代わって解 説、2.医療の場における医師と患者の立場上の違い、医学に素人のため、医学書のミニチ ア版にならないよう、3.患者への対処の仕方に「・・・してはいけない」式が多すぎる、むし ろ積極的な「・・・すべし」の面、積極面に注目し、患者全体を巨視的におおらかな見方を 強調。
全国からてんかんセンターに来院した外来7100名、1100の入院患者との毎日の治療上のや りとりから集め学びとったもの。昭和55年はてんかんセンター創立5周年。 筆者は、昭和39年北大医学部卒静岡東病院(てんかんセンター)神経科医長。 現在は故郷北海道に帰り、岩見沢市立総合病院精神神経科。


てんかんの正しい知識
一健康人として生きるために一

朝倉哲彦 著 南江堂 S.61.12 初版 S.63.2 2刷 76pp \700

てんかんという病気を正しく理解し、自信をもって生活されることを願って昭和46年「て んかん−神聖病」というのを出版して好評であった。それから15年たった今、診断と治療の面で 進歩したので、改訂より書き直した。前書は医学書の堅さがあったのを、わかりやすく、 やわらかくした、とある。
この種の本には珍しく、イラストなどふんだんに使ってある。やさしいようだが、てんかんと いう病気そのものが複雑なので、少し簡単すぎて、わかりずらいところもあるようだ。 筆者は、鹿児島大学医学部の脳神経外科教授。てんかん学会会長歴任。 出版社の南江堂は,医学書専門の老舗で、こういう安い一般向けの本は珍しい。


意識障害の人間学
一てんかんの精神病理一

河合逸雄 著 叢書 精神の科学7 岩波書店 S.62.11 初版 232pp \1800

日本てんかん協会機関誌「波」昭和63年3月号の図書紹介欄で、北九州市療育センターの 整形外科医が次のような紹介文を書いている。
「はしがきに著者はいう『てんかんの精神医学的考察をした』「読者の一部に理科系の人 を推定した。理科系、特に医科の人々には精神医学なるものが実に妙な学問に映るらしい から・・・」(中略)
本書の目次に従って紹介すると、発作・てんかん患者の性格・精 神病理像、発作間歇期の精神症状、意識、知能、認知、と続き、セルフヘルプで終わる。一 言でいえぱ「てんかん」および「てんかんを持つ人びと」の理解についての著者の基本的 スタンスの主張の書とよみとれる。セルフヘルプの章は随筆風で、著者の思想、意見、人 柄などがうかがえる楽しい章であった。だがその他の章は、気楽に読むには難解で、読み 通すにはある程度の専門性と構えが必要になる。学問の書だから当然のことなのだが、そ のため読者が少数に留まるのが残念である。改めて「てんかんを持つ人びと」の人間像を 平易な随筆風解説書として書いていただければと思う。また精神遅滞、脳性マヒなどの脳 性障害も精神病理学的に見直すことが必要ではないか。読後そんな懐疑も私の中に生まれ た」。文科系の私も、全く同じような読後感を持ったので、ながながと整形外科医の紹 介文を引用した。
著者は、昭和9年生。京大医学部卒、付属病院精神科、現在国立宇多野病院副院長。


精神科看護 <雑誌>
一特集・てんかん一

(社)日本精神科看護技術協会の機関誌 30号 H.元.12 112pp \1000

「てんかん」の概念とその変遷、病理、治療、性格傾向および精神病状態、リハビリ、 看護、などについてそれぞれ専門家が書いているが、精神病院でのてんかんの人たちの処 遇はかなり遅れているようだ。


再考・てんかんとくすり
−患者・家族・そして治療者のために−

武井 満 著 星和書店 S.63.7 初版 224pp \2200

日本で、臨床的に実際に抗てんかん薬が繁用されるようになったのは、戦後も昭和30年代に なってからで、それはいわゆる日本の高度成長が始まった時期と一致する。いまや高度成 長も終わろうとし、高度成長は何であったかが漸く見える時期になったように、てんかん の薬による治療もその結果が漸く見える時期に来て、抗てんかん薬のもつ可能性と限界も 明らかになってきた。これまでのてんかんの薬物療法について批判的観点から書いている が、原点に戻ってもう一度見直し、実際の治療に携わっていてそう思わずにいられなか った、自分はこう思う、という事を書いた、と著者は言っている。
昭和63年11月号「波」の図書紹介で、香川医大学の久郷医師が次のように書いている。 「てんかん治療の第一線を担当されている治療者の先生がたに一読を勧めいたします。最 も新しいてんかん治療原則が記述されていることから、日常の指針になると考えるからで す」と。主として患者・家族を対象とした一般向き体裁のこういう本を、ちゃんと目を 通す医師は少ないのではないかという気がする。
著者は、昭和48年群馬大学医学部卒、東京都立松沢病院精神科医長。


てんかんの薬物療法

日本てんかん協会編 ぶどう社 S.62.2 初版 S.63.8 6刷 223pp \2400

本書の出版目的は、患者・家族をはじめとして教育・福祉等の関連専門識および医療関係 者のための、てんかんの薬物療法に関する、きわめて実際的な入門書を作る事、とある。
序章は、刊行の背景についてガイダンス形式で述べ、第l章では、てんかんの診断の基本 的手順から薬物療法の開始とそのみちすじ、第2章は、抗てんかん薬の作用、第3章は、 抗てんかん薬の副作用、第4章は、正しい服薬のための具体的ハウ・ツー。以上は、薬 物療法についての基礎的理解のために。第5章以降は、より専門性の高い理解のために、つ まり、第5章は、個々の薬剤について、第6章は、抗てんかん薬の血中濃度測定の解説、 第7章は、薬剤のいわゆる「効能書き」の一覧となっている。
12名の執筆陣だが、大半は曾我孝志(国立精神神経センター武蔵病院精神科)、 序章、第4章を松友 了てんかん協会常務理事が書いている。
主要くすりの「効能書」が全部掲載されているのは便利といえば便利だが、われわれ素 人には猫に小判か。


難治てんかんの治療とケア

日本てんかん協会編 ぶどう社 S.63.7 初版 234pp \2800

主に、医療・福祉・教育等の現場に働く専門職を対象に、現代てんかん学の最近の成果を 判り易く伝えるために毎年開かれている「てんかん医学基礎講座」、その第9回昭和61年 開催の講演を基礎に出版されたもの。
てんかん発作とてんかん病型 一 山崎康子(岡山大医学部小児神経科)
てんかん発作の見分け方 一 長谷川精一(寺泊病院副院長)
小児期難治てんかんの薬剤治療 一 藤原建樹(静岡東病院医長)
抗てんかん薬の作用と副作用 一 加藤秀明(岐阜・須田病院院長)
心身障害とてんかん 一 高谷 清(第一びわこ学園園長)
てんかんリハビリテーション 一 曽我孝志(国立精神神経センター武蔵病院)


自閉症・登校拒否・家庭内暴力・てんかん・精神遅滞
心を病む患者の家族のために一シリーズ(4)

波辺昌祐 編 90.6 初版 153pp 保健同人社

「心を病む患者の家族のためにシリーズ」として自閉症・登校拒否・家庭内暴力・精神遅 滞と一緒に「てんかん」が人っていることに抵抗を感ずる人がいるかもしれない。
第1章 自閉症の子供の家族のために―古元順子(岡山大学教育学部)、第2章 登校拒否にな やむ家族のために―杉山信作(広島市児童総合相談センター)、第3章 家庭内暴力の家族の ために一岡田隆介(広島市児童総合相談センター)、第4章 てんかん患者の家族のために― 久郷敏明(香川医科大学精神神径科)、第5章 精神遅滞者の家族のために―末光 茂(旭川 荘児童院院長)
第4章の「てんかん」は、次の項目に従って,質疑応答されている。1.てんかんの定義、 2.てんかんに必要な検査、3.てんかんという診断がでたら、4.治療経過の予測、5.てんか んの薬物治療、6.適剤と適量の決め方、7.てんかんの薬の副作用、8.てんかん発作への対 策、9.難治性てんかん、10.てんかんの病名の告知、11.家庭での養育態度、12.てんかんと学 校教育、13.てんかんと就労の間題、14.結婚と妊娠、15.てんかんの包括的治療



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